プロローグ あの遠い夏の日に |
このピアノです・・・・。もう年老いてしまいました。でも・・・・ピアノは知っています。 日本とアメリカが戦っていた、あの遠い夏の日-----。 多くの若者が・・・17、8歳の少年も・・・ 爆弾を積んだ飛行機で、大空へ飛びたっていきました。 敵艦に体当たりするために。 愛するひとを、父母を、ふるさとの山河を、戦火から護ろうと。 「特攻」の若者たちは、決死の出撃をしてゆきました。 特攻隊員たちは、遺書を書き残しています。
少年飛行兵。熊本県生まれ、19歳。 山下孝之さんは、沖縄戦たけなわの1945年5月25日、 宮崎県都城の基地から出撃し、沖縄近くの海で戦死しました。
京都帝国大学卒、海軍予備学生出身。福岡県生まれ、23歳。 林市造さんは、4月12日、鹿児島県鹿屋の基地から出撃し、 沖縄の北、与論島の東のアメリカ軍機動部隊に突入し、戦死しました。 日本が敗戦に追い込まれていたとき。 歴史上かつてない「特攻作戦」で 6,000名もの若者たちが 空に、海に、青春のいのちを散らして亡くなっています。 |
朗読ブック「月光の夏」(毛利恒之著・サンマーク出版)より抜粋