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「Twinkle,twinkle,luckystar」 2004年12月31日(金) その1

昨日12月30日、舞台「Twinkle,twinkle,luckystar」は無事に千秋楽を迎えることが出来ました。全てのスタッフの皆さんの御尽力、支えてくださった役者の皆さん、そして年の瀬にも拘らず劇場にお運びくださったお客様のおかげです。本当にどうも有り難うございました。


今回のお話は昭和23年(の冬)の日本が舞台でした(ちょっと待てよ?「昭和」といったら日本以外にないだろう・・・ま、いっか)。昨年の「無頼の女房」が昭和24年でしたから、奇遇にも半年くらいしか違わないってことですね。そのような訳で戦後色の濃い作品でした。といっても悪いイメージばかりじゃないですよ。昭和23年4月に「彗星の如く現れた美空ひばり」によって日本は活気を取り戻した、その勢いに乗って登場人物たちは「第二の美空ひばり」を探そうとオーディションを開くんですからね。

3年間の監獄生活から釈放された稀代のペテン師、星野金太郎(坂本薫平氏)は、以前ペテンの相棒だった和賀俊介(横井伸明氏)のもとを訪れる。和賀は脚本家志望の南雲拓巳(楠田)と遊馬(島田朋尚氏)、一輝(岩橋直哉氏)らと共に芝居を打つための資金稼ぎに苦労していた。金を稼ぎたい金太郎と芝居を打ちたい俊介たち。彼らの思惑は一致し、主演女優の募集オーディションを開くことに。つまり、「この作品は青少年育成のため!」と銘打ってGHQに金を出させようという魂胆。そのためにマッカーサーに取り入って懐を温めている塚田龍造(難波圭一氏)、通称ツカタツ(ヤクザの親分)に賭け合うことにした。

乗り気でないツカタツに対して妻、涼子(すずこ、武田竹美さん)の後押しがあり、資金調達に成功。オーディション当日、予想を上回る参加者が押しかける。その中で一人の無愛想な少女、浜名橘子(きっこ、西田彩香さん)の歌とダンスに目が止まる。南雲が一晩で書き上げたミュージカル作品をスポンサーである塚田夫妻に見せると、涼子は絶賛するが、ツカタツは激怒する。理由は2つ。世話になっているGHQが悪者になっているため自分の立場がないことと、不細工な橘子では第二の美空ひばりとして売り出せないこと。「脚本と主役を変更しなければ降りる」と言うツカタツに対して、和賀は断る。それを見届けた金太郎は、今まで集めた資金を持ち逃げしてしまう。

しかし金太郎はツカタツ家のヤクザ、飛葉(江川央生氏)に見つかり怪我を負わされ、持ち出した資金もすべて奪われてしまう。一方では、ツカタツの妨害が始まる。予定していた劇場から公演を断られ、商店街の店からビラ貼りを断られ、衣装作りに協力してくれるはずの縫製工場からミシンの貸し出しを断られ、そして稽古場までも追い出されることに・・・・。全ての望みを絶たれた彼らは、一体どうなるのか?といった感じの序盤です。


今回楠田が演じた南雲は元男娼で、その秘密をネタに脅されたり、障害の多い恋(南雲は和賀のことを密かに想い慕っている)に苦しんだり、他にも色々・・・・とにかく精神的に辛いシーンが多かったです。それがこの作品で最も苦しんだ部分です。たとえ芝居とは言え、僕の心の中は南雲になりきっている(つもりな)ので、本当に苦しいし、悲しいし、切ないし・・・・そういう思いを稽古期間中ずっとしているのが、辛かった・・・・。だから役作りは殆どしていません。南雲の気持ちになることと、特に和賀さんとの関係性を保つことを心掛けました。こういう内に内に自分を追い詰めていく役は辛いものですね。「645」は発散系キャラだったし、その前の「無頼の女房」やさらに前の「ボタン工場の羊少女メー」はおトボけ系キャラだったから、今回のような精神的ストレスは少なかったです。別の意味で大変でしたけど。でもここまで役に向き合って演じたことは初めてかも知れない・・・・そう考えると今回頂いた南雲拓巳という役はとても苦しかったけど、しかし役者、楠田敏之にとっては大きな転機になったような気がします。脚本の松田環さんに心から感謝したいと思います。


今回の作品に関してどうしても触れておきたいことがあります。それは「音楽」です。作品中のBGMはすべて大塚彩子さんによるピアノの生演奏でした。ピアノは常に舞台中央でしたから、皆さんからも見えましたよね?

芝居のバックで流れるBGMの他にシーンとシーンの間のブリッジ、プロローグの歌「ラッキースター」、そして南雲の書いた作品はミュージカルですから、劇中劇の中に盛り込まれた歌「チョッコレイト」、「パラダイス」・・・・驚くなかれ、それらすべてをピアノの大塚さんが作曲なさったのです!実は大塚さんはプロの作曲家でもあり、ピアニストでもあるのです。本当に彼女は天才です。稽古中、演出の難波さんが「こんな感じで」と抽象的に言ったリクエストに即興でピアノで弾いて作曲していくんです。まさに感動モノですよ。

ちなみに3曲ある歌の中で、今でも頭の中をグルグル回るのは、やはり「ラッキースター」です。この作品を象徴する、そしてインパクトの大きな歌です。皆さんにも気に入って頂けたと思います。そしてもう一つお勧めなのが「パラダイス」。この歌が2回目に歌われるシーンでは、広島の原爆に晒されて体の弱い娘が死んでしまうのですが、稽古中そのシーンのたびに目頭が熱くなりました。僕はこういうシーンに弱いんですよね・・・。


もう一つ、この作品中では「声だけの出演」がありました。難波さんによる警官と楠田による劇中劇のナレーションです。このナレーション、実は生ナレだったんですよ。何回かご覧頂いた方には、毎回微妙に違うのがお分かり頂けたかも知れないですね。正直言ってこの芝居の中で僕が最も緊張していた時間です。なぜならナレーションですからね、絶対に噛んではいけない!そのプレッシャーが如何に大きいものだったか・・・・。僕が噛んだらせっかくの劇中劇が台無しになるんです。

舞台に向かって左側の袖にマイクが用意されていて、その前に立って、舞台袖は暗いのでもちろん原稿なしで喋っていたんです。少女たちが逃げるくだりの、あのちょっと長いナレーションは、緊張感を持って、かつテンションを高く、スピード感もあって・・・・もう噛みそうな要素満載なんですよ。一度も噛まなくて本当に良かった・・・・。5ステージ目なんて、「これさえ噛まなければ完璧。」って、そんな余計なことをやっぱり意識しちゃうんですよね。だから一番緊張しました。まさに手に汗握る状態ですよ。今も思い出したら手に汗かきました・・・。「手のひらを汗でグッショリさせるってこういうことなんだ」と、妙に冷静な自分もいたのがおかしかったです。

以上、ちょっと裏話でした。そうだ、いつか稽古場日記に書いた「あ、それは禁句。」の部分、分かって頂けましたか?あのシチュエーションで「あ、それは扇子」って言うのは、どう考えてもあり得ない!(笑)


年末という慌しい時期で、さらに天候が厳しく(特に29日は雪でした)、またわざわざ遠方からお運びくださったり、何度も何度もいらしてくださったり、本当に本当に有り難うございました。御来場くださった皆さんに再びお会い出来て、ものすごく嬉しく、また幸せでした。

  終演後は売り子をさせて頂いた訳ですが、色々とお詫びしなければならないことがあります。3日間とも2公演(初日も昼間にゲネプロがありました)なので、とにかく精神状態が普通ではありません。失言失態があったかと思います。どうかお許しください。

本音を言ってしまうと、せっかく楽しみにいらしてくださった皆さんにお会いするのですから、最後まで楽しんで帰って頂きたいし、良い思い出にして頂きたい。だから僕は笑顔で接したい。しかし、そこはやはり僕も普通の人間です。作られた人形やロボットではありませんので、どうしても笑顔が保てない、あるいは笑顔が引きつってしまう事もあったと思います。不快に感じられた方には心からお詫び申し上げます。

でも僕は一人でも多くの方にお礼を言いたいし、皆さんの笑顔に触れたい。だから今後もきっと続けていくと思います。僕の我侭ではありますが、どうか分かってやってください。ただし、あまり時間を費やすと制作スタッフさんに御迷惑をかけてしまうので、その辺は僕と皆さんとの協力で、時間を縮められるよう頑張りましょう!お願いします。

  あとは、千秋楽(夜の部)の皆さんへ。劇場撤収作業の関係で、御挨拶が劇場の外になってしまいました。ものすごく寒かったと思います。特に列の後半にお並び頂いた皆さん、本当に申し訳ありませんでした。最後の方は1時間近くお待ち頂いたはずです。そこまでして待ってくださる皆さんのお気持ちに、ただただ感謝の気持ちと申し訳ない気持ちでいっぱいでした。実はあのとき僕はシャツ2枚(Tシャツとあの真っ赤なシャツですね)しか着ていなくて、最初は平気だったのですが(皆さんの手がちょっぴり冷たくて気持ち良かったくらいでした)、最後の方はかなり震えていまして(皆さんの手の方が温かく感じました・・・)、でも「みんなも同じように寒いんだから!」と頑張りました。「馬鹿なことするな!!」って絶対誰かに怒られるな・・・。

  それから初日の皆さんへ。終演後、またもや手を洗うのを忘れてしまいました。汗でベタついた手で握手してしまったことをお詫びします。ゴメンなさい。2日目と楽日はちゃんと石鹸で手を洗って握手しましたので、大丈夫ですよ。何がだろう?


楠田関連のグッズ販売に関してですが、まずは「楠田神社のお守り」です。せっかく並んで頂いたのに数が足りずにお手に出来なかった皆さん、本当にゴメンなさい。その分も、手になさった皆さん、大切にしてやってくださいね。終演後、お一人お一人の御希望の文字を加筆させて頂きました。受験や就職の成功、病気の治癒を祈願する御希望がやはり多かったです。あとは自分に対する激励とか。

一般論として、実際お守りを持っているからって必ず祈願成就するとは限らないけど、でもお守りが心の支えになることはあると思います。普通のお守りもそう思って買いますよね?持っているから試験や治療に対してなんとなく自信が持てたりする訳で、もし今回の「楠田神社のお守り」がその一助になれば幸いです。全てのお守りに書いた言葉は、心を込めて書きました。どうか皆さんの願いが叶いますように・・・。

  本作品のDVD予約、たくさんの方にして頂き、どうも有り難うございました。劇団「TBワンスモア」さんの公式サイトでは、通販の申し込みフォームが用意される予定ですので、当日劇場に来られなかった皆さん、是非DVDでご覧になってください!1月1日〜31日まで予約受付しています!さっそくGO!GO!(1月2日追記)

  ブロマイドをお手にされた皆さん、いかがでしたか?特に千秋楽限定の楠田セットA、Bの方は、どの6枚が採用されたのか実は僕はちゃんと見ていないんですよ。2、3枚くらいだったかな、サインを書くときにチラッと見ましたけどね。でも思い返してみると・・・・なんだか信じられない気がします。まさか自分の写真を買ってくださる方が現れるなんて、以前は想像したこともなかったですから。本当に有り難いことです・・・・。というか正直言って恥ずかしいんですよ。僕は写真写りにまったく自信がありません。だからもしそういう仕事が来てしまったら・・・・いや実はもう来てしまったんですが(確か12月23日の撮影でしたよね、声優グランプリさん?)・・・あぁ、忘れよう・・・。

  次に「楠田の気持ち」です。これは千秋楽当日の朝、急遽販売することが決まったので、事前に小部屋では触れられませんでした。ゴメンなさい。一言で言うと「造花の一輪挿し」です。しかし!ただの小物じゃないですよ!なんと、川原君手作りなんです!!!!いやぁ、ホントに驚きました。彼がこんなこと出来るなんて、今まで知らなかったですから。小さなガラスの筒(試験管みたいな)に白い砂が入っていて、それを薄手の色紙で包んであって、小さな造花が挿してあります。ガラスの筒には楠田のサインと「観覧記念二〇〇四.十二.三十」のシール。そしてカラー針金で作ったスタンド(台はハート型)で固定されています。これ、僕じゃなくてむしろ川原ファンの皆さんに差し上げたかったです。きっと、いや物凄く喜ぶだろうなぁ。本当に川原君ありがとう!!!彼は2日目と楽日には売り子もしてくれました!「楠田の気持ち」というネーミングも川原君です。岩橋君も3日間、売り子してくれましたね!ありがとう!!

  最後に「645 オルゴールCD」ですが、5月に売り切れなかった33枚を再販させて頂きました。めでたく千秋楽までに完売しました。どうも有り難うございました。もう再々販はありませんので、今回初めてお手になされた皆さん、よかったです!(笑)


ずい分と長くなってしましたね。ここまでお付き合いくださって、どうも有り難うございました。「いつも小部屋を楽しみにしています!」と言ってくださった方がいらしたので、つい力が入ってしまいました。そう言って頂けるとやっぱり嬉しいです。あと、「青春ラヂオを聴いて来ました。」という方や「RUSH&DREAM!やってます。」という方、ジャンプフェスタに行ってきた記念の宍戸(等身大?)の写真をわざわざ見せてくださったり、そしてたくさんのお手紙やプレゼントを頂いたり・・・・皆さんの思いやりに心打たれました。(インターチャネルの松井プロデューサーさんからもお花を頂きました。どうも有り難うございました!)

この「Twinkle,twinkle,luckystar」という作品は奥が深いです。それぞれの登場人物にそれぞれの事情があって、いろんな思いが交錯して。そういう一人一人の思いを考えながら、もっとじっくり味わってみたい作品です。上演時間の関係でカットになってしまった部分(30分くらい)も含めて、また台本を読み返してみたいと思います。



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